鼻中隔延長術 施術内容
日本人の鼻の特徴である鼻が短い、鼻尖が低く上向きに対して大きな変化を望む場合や重度の短鼻の場合は、鼻中隔に軟骨を移植して延長します。鼻尖の長さ、角度、幅を自由に決められる鼻中隔延長術は、鼻の構造自体を改善する”構造鼻形成術“です。この手術によって、日本人に多い上向きの丸い鼻尖の悩みは完全に解消されることになりました。鼻の構造自体を改善する術式ですから、生涯にわたって安定した結果が得られます。
お勧めの方
・短い鼻を延ばしたい方
・上向きの鼻を下に向けたい方
・正面から鼻の穴を見えないようにしたい方
・鼻尖を高くしたい方
・西洋人のようなシャープな鼻尖にしたい方
【鼻中隔延長術】
日本人の鼻の特徴は、西洋人と比べて小さい(短く、低い)ことである。鼻形成術に際しては長さ、高さを追求するのではなく、顔面の他のパーツとのバランスを考慮して美しい鼻を形成することがゴールとなります。
鼻の長さは、正面から見る際には鼻根部の最低点(nasion)から鼻柱の最下点までの距離として計測されます。
短鼻(short nose)の改善を希望される患者様では、鼻根部の最低点(nasion)の位置を頭側に移動させるか、鼻柱(ないしは鼻尖下端)を尾側に移動させる必要があります。
鼻中隔延長術はどんな患者様に向いた方法でしょうか?
1)鼻が短い、小さい方(short nose)で、鼻先を下に向けて鼻を長く見せたい方
2)側面から見て鼻尖の先端が過度に上向きな短鼻の症例に対して、鼻尖先端を尾側に下降させる必要がある方
3)鼻尖を低く高くしたい場合、側面から鼻尖の突出点tip defining pointが丸くてはっきりしない方で、シャープに鼻尖を高くしたい方
に適した方法です。すなわち鼻尖の方向、長さ、尖がりなど3次元で調節が可能な夢のような手術法といえます。
鼻中隔延長術の目的
鼻尖にprojection(高さ)を出す、鼻尖を下方(尾側)に延長させる、鼻柱を下方(尾側)に延長させることであり、症例に応じて理想的な方向に鼻尖、鼻柱を突出させることになります。従来から行われてきたonlay graft(鼻尖に耳介軟骨などを置く)中心の鼻尖形成、鼻柱形成術では不可能であった形態を可能とし、自由度の高い劇的で、効果的な手術法であるわけです。
鼻中隔延長術
麻酔
鼻中隔延長術は手術時間が2時間程度、併用手術がある場合には3時間程度を要するため、麻酔は局部麻酔だけでは難しく、通常は全身麻酔(吸入麻酔ないしは静脈麻酔)下に行っています。
ドナー
軟骨採取部位(donor)としては鼻中隔軟骨、耳介軟骨、肋軟骨が考えられます。鼻尖のみ、あるいは鼻柱のみの延長の場合に、変化の度合いが軽度であれば 採取部として同一術野である鼻中隔軟骨が適しています。一方、大きな変化を求める場合、あるいは鼻尖・鼻柱ともに延長させる場合には鼻中隔軟骨では採取量 が限られており、より大きな移植片として耳介軟骨、肋軟骨を選択します。
1)耳介軟骨
当院では患者様の希望も合わせてドナーを選択しますが、通常は両側の耳から30×15mmの軟骨を計2枚採取します。
2枚を重ね合わせて使います。鼻尖、鼻柱を新しい位置で固定するためには支持組織としての強度がもっとも重要ですが、移植片の厚みは鼻腔内を狭めてしまうという相反する利点、欠点を持ち合わせることになります。理想を言えば“薄くて硬い”素材があればよいのですが・・・。
2)肋軟骨
既に過去の手術などで耳介軟骨が採取されてしまっている場合には肋軟骨を選択します。
肋軟骨は40×20mm程度採取できるため、量的には十分で、3mmほどの厚みに細工しても耳介軟骨よりは硬く、強度は十分です。ただしバストの下側に4㎝ 程の薄い傷跡が残るのが欠点です。また肋軟骨は曲がる(warp変形)といわれていますが、薄い軟骨を2枚裏側同士で重ね合わせることによって防止していま す。
3)鼻中隔軟骨
同一術野という利点を生かして鼻中隔軟骨を採取することも可能です。但し日本人においては構造的に 鼻 が小さく、特に鼻中隔延長術が適応になるような短鼻の症例では当然鼻中隔軟骨も小さく、20×10mmほどしか採取できないこともあります。採取後にL型 に残った軟骨がフニャフニャして土台として十分な強度が得られないことも多く、その場合には偏位などの合併症を生じやすく,軽度の延長に適応は限定されます。
アプローチ法
アプローチは安全で確実な結果を出すためにオープン法が優れています。
まず理想的な鼻尖、鼻柱の術後形態を獲得するためには、移植軟骨の方向、長さは術中かなり執拗に調整しなければなりません。通常数回は方向決めの移植軟骨を鼻中隔に仮縫い固定をすることになりますが、この作業を正確に行うのはクローズド法では不可能と言えます。
また術後合併症として、ときに鼻尖、鼻柱の偏位がみられますが、これはドナーである移植軟骨の歪み、レシピエントである鼻中隔軟骨の歪みが原因となることが 多いです。この歪みは両側鼻翼軟骨中間脚を移植軟骨先端に縫合した段階ですでに確認されますが、オープン法であれば直視下にどの部分に原因があるかが把握でき ます。そこで移植軟骨の先端の長さ、方向を調節するか、または鼻翼軟骨の中間脚の縫合位置を調節することによって、歪み、彎曲を直視下に矯正することにな ります。この操作がもっとも重要ですが、クローズ法では不可能であり、勘に頼った手術になってしまうため精度に大きな差が出ることになります。
さらに術後の鼻尖最突出部においては皮膚の直下に移植軟骨があるのではなく、移植軟骨の先端を両側鼻翼軟骨の中間脚で覆うことになり、移植軟骨の先端から鼻背部にかけて繊細な細工が必要となるために、これもクローズ法では難しいのです。
当院における数百例の鼻中隔延長術を経験して、術後結果を詳細に分析した上で、安定して良好な結果を得るためにはオープン法が適用となると考えます。
実際の手術手技
①切開・剥離
経鼻柱切開から鼻翼軟骨上を丁寧に脂肪中間層で剥離する。術後の後戻りの原因のひとつと考えられるのは頭側への剥離不足で、鼻尖部だけの剥離で尾側延長しようとすると元の位置に戻ろうとする皮膚の張力(反発力)も大きいのです。そのため頭側に向かって上外側鼻軟骨、鼻骨上も剥離して鼻全体を皮弁として尾側に引き下 げるようなイメージで後戻りを極力防止すべきです。
次に鼻翼軟骨上の軟部組織を切除して軟骨を露出します。
②鼻翼軟骨頭側切除
鼻翼軟骨の頭側切除をすることにより、上外側鼻軟骨(ULC)との線維性結合も切断されて、鼻翼軟骨の下方延長の際の可動域を広げることになります。
切除幅は症例によって異なりますが 2~4mm 程度です。
③鼻中隔軟骨剥離
さらに左右の鼻翼軟骨間を細部剪刃で剥離して、鼻中隔軟骨下端(caudal septum)を露出し、軟骨膜をメスで切開して軟骨膜下で鼻中隔軟骨を頭側に向かって広く剥離します。
なお剥離を終えると鼻中隔は必ずしも正中に位置しているわけではなく、むしろ左右どちらかに偏位していることが多いのに気づきます。偏位の状況次第で移植軟骨は鼻中隔の右側に移植するのか、左側に移植するのか、あるいは2枚の耳介軟骨で鼻中隔を挟み込むのかを決定します。
④軟骨移植
移植軟骨と鼻中隔軟骨は、安定のために最低でも10mm程度はオーバーラップさせて5-0黒ナイロンで6~8箇所で縫合固定します。その際移植軟骨の固定位置 の目安は、左右の鼻翼軟骨の中間脚を前下方にスキンフックで引っ張った状態が延長の限界であり、移植軟骨の前下方先端がほぼその位置となる程度とします。最 終的な鼻尖の前、下方への突出の限界は鼻翼軟骨の中間脚の可動範囲で決まるのであり、移植軟骨の長さで決定されるわけではありません。
⑤鼻翼軟骨中間脚縫合
中間脚の可動性として鼻中隔を支点として鼻腔粘膜の伸展性に限界があり、扇形に方向決めしていきますが、どの程度尾側に下げたいのかによって必然的に鼻尖の高さ(projection)の限界が決定されます。
下方延長すればするほどprojectionを出せなくなるというジレンマに陥ります。このバランスを調節するのが難しく、皮弁を戻しては鼻柱部の仮縫いを行って、TDPの位置(突出度と尾側延長)のバランスがよいかどうかを確認し、この操作は通常何回か繰り返して理想的な位置を探ることになります。なお鼻尖のみで はなく鼻柱も下降させる場合には内側脚も移植軟骨下端に縫合固定します。
この点がオープン法の有利点ですが、何度でも移植軟骨への鼻翼軟骨中間 脚 の理想的な縫合位置を探索することができます。最終的には側面から見て、鼻背から鼻尖への連続性、tip defining pointの位置などを確認し、正面からは鼻梁、足元からは鼻柱に偏位がないか、鼻孔形態の左右差などを入念にチェックします。良好な位置が得られたら、鼻 翼軟骨中間脚が移植軟骨先端を完全に覆うように、再度移植軟骨の先端を繊細にトリミングして、5-0白ナイロンで三針縫合します。
⑥軟部組織移植
最後に鼻翼軟骨上でトリミングした軟部組織を塊として縫合して先端にonlay graftしています。
⑦インプラント挿入
ところで鼻中隔延長はI 型インプラントによる隆鼻術を同時に併用することも多いのですが、その場合にはインプラント下端と鼻尖との連続性に注意します。インプラントを移植軟骨(頭側)に 5-0ナイロンにて縫合することによって適正な位置(上下左右)に固定させることができます。インプラントは経時変化で頭側移動することもあるため、その防止にもなります。
⑧閉創
閉創は鼻柱部では6-0PDSにて中縫いを3針行い、7-0黒ナイロンにてできればマットレス縫合で皮膚縫合を行います。鼻腔内は6-0青ナイロンで一層に閉創します。
POINT
日本人に多い短鼻、上を向いて鼻の穴が正面から見えている鼻を改善する施術です。
鼻尖の延長方向は、鼻尖を高くする方向、鼻尖を下向きに降ろす方向、鼻柱を下向きに降ろす方向などいろいろなバリエーションがあります。
単に軟骨を移植する手術とは異なり、鼻の構造自体を改善する施術です。鼻尖の長さ、角度、鼻尖の大きさをある程度自由に決定できるため、デザインの幅が広く、さまざまな患者さまの希望にお応えできる施術です。
鼻尖の延長に使用する、耳介軟骨、肋軟骨はご自身の組織ですから、鼻尖部皮膚にストレスがかからず長期的にみても安心です。
国内で鼻中隔延長術を行なっているクリニックは少ないのですが、鼻形成術先進国のアメリカにおいては、鼻中隔延長術は“構造鼻形成術”と称し、第二次鼻形成術革命として認知されている施術です。
鼻中隔延長術の特徴
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施術時間
約240分
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麻酔
全身麻酔/静脈麻酔
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腫れ具合
★★★☆☆
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ダウンタイム
5~7日
術後5日間ギプス固定
抜糸 7日目
同時に行うことが多い施術
つり目を改善し、垂れ目を形成
目が離れていて小さい目もとも切れ長の大きな瞳に
四角い大きな顔もほっそりとした理想の卵型に
顔の横幅を小さくして憧れの小顔に
額の突出による険しい印象を、女性的な優しい印象へ
よくある質問と答え
- 鼻中隔とは何ですか?鼻のどこにあるのですか?
- どこから手術するのですか?傷が見えますか?
- 移植する軟骨はどこからとるのですか?
- 鼻の穴が正面から見えるのですが、どんな手術をすればいいですか?
- 鼻尖が低く、上を向いているのですが、長くして鼻先も高くできますか?
- 鼻中隔延長術は、鼻尖を下向きにしかできませんか?
- インプラントが入っていてもできますか?
- 鼻が上を向いているのですが、インプラントを入れれば下がりますか?
- 痛みについて教えてください。
- 腫れについて教えてください。
- 鼻中隔とは鼻の孔を左右に分けている衝立のような壁のことを言います。鼻の中に指を差し込むと鼻の穴の入り口から1センチ程奥にある軟骨で、鼻を上方と後方から支えています。鼻中隔軟骨は鼻筋の高さだけではなく、鼻筋の長さや鼻先の向きに影響します。
- 手術は、鼻柱を横に切り(経鼻柱切開)鼻の穴の中を切開します。外側の傷は、正面を見ている状態では見えにくくほとんど分からなくなります。
- 一般的には両側耳介から軟骨(20×10ミリ大)を採取します。しかし既に過去の手術で耳介軟骨を採取されている場合には、鼻中隔の奥上方からかあるいは肋軟骨を採取することもあります。
- 東洋人の鼻は皮膚が厚く、皮下組織が豊富で軟骨成分が脆弱なため、鼻尖が丸みを帯び短く上を向いた鼻の方が多くなります。鼻が短い方は、鼻中隔軟骨が短く、鼻の奥で終わっていますので、鼻中隔軟骨に軟骨を継ぎ足せば、鼻は下に伸びて鼻先は下を向きますので、鼻穴は正面から見えにくくなるのです。
- 鼻を上方と後方から支えている鼻中隔軟骨は鼻筋の高さだけではなく、鼻筋の長さや鼻先の向きに影響します。鼻中隔が短いと鼻が短くなり上を向きます。その場合は、鼻中隔を延長すると下に向きます。同時にはインプラントで鼻筋を高くしたり軟骨を移植して鼻尖を高くしたりできます。
- 鼻中隔延長術は、延長方向として(1)鼻尖を高くする方向(2)鼻尖を下向きに降ろす方向(3)鼻柱を下向きに降ろす方向などのバリエーションがあります。単に軟骨を移植するのとは考え方が根本的に異なり、鼻の構造自体を改善する“構造鼻形成術”ですから生涯にわたって安定した結果が得られます。
- 以前に入れたインプラントはL型でしょうか?I型でしょうか?L型が入っている場合は、抜去してから行います。その後鼻筋を高くする場合は、新たにデザインしたインプラントを入れたり、元々入っていたインプラントを細工して入れたりします。
- L型インプラントで鼻尖を下げることはお勧めしません。理由はインプラントが頭側に移動しかえって上向きになる事があるからです。また長期的には鼻尖にストレスがかかり、インプラントが露出する可能性があります。鼻尖がかなり低く上を向いているなど重度の短鼻に対しては、耳介軟骨を、鼻中隔に移植する鼻中隔延長術で改善します。
- 手術は、全身麻酔あるいは静脈麻酔で行いますので、眠っている間に無痛の内に終了します。術後に強い痛みを感じる方は少なく、お渡しする鎮痛剤でカバーできる位です。
- 術後軟骨の安定を図り、腫れを早期に軽減するために5日間のギプス固定があります。おおまかな腫れが引くまでに約1週間をみて下さい。